うちの園と音楽と子どものこと~HAPPY~

うちの園と音楽と子どものこと~HAPPY~


 
常々、音楽や絵や造形などの芸術に関わる人の中に、子どもへの眼差しがフラットな人たちが多いような気がしているのです。
音楽や、絵や、モノを作るうえで、楽しめるということのすばらしさや、
上手いかどうかではなく、良さみたいなことを見る訓練を自分にも他人に対しても積んでいるからかもしれません。
 
一般的に音楽と保育園・幼稚園というと鼓笛隊のイメージがあります。
でも私は上手く吹けない子のピアニカにティッシュを詰め込むような、音楽の伝え方を子どもたちにしたいと思いません。上手く演奏し、見せることを楽しいと思う子どもたちばかりとも思えないのです。
そんなわけで、鼓笛隊に興味がありません。もちろん、子ども達を魅了し楽しくできる人もいる可能性は否定しないし、そういう人と出会えたらやるかもしれないですけれども。
 
そんな折、楽器屋さんとお話をしていて、たまたまプラスチック製の管楽器を見せてもらう機会がありました。子どもに管楽器なんて難しいよねと思ったけれど、試しに近くにいた子どもにマウスピースを渡してみたら、数回フーフーと吹くうちに音が出ました!大人はすっとは出ない人が多いのに。
なので、楽器を渡してみたところ、トロンボーンは伸ばすと手が届かないけど、トランペットは持つことができて。そして、音が出ました。「もっと、やりたーい。」
 
そんなわけで、楽器屋さんの策略にのり?導入をしたいと思ったものの、もう一つ大きな壁が・・・
 
人が音楽をやりたいとパッションが出てくる時って、心躍る音楽を奏でる人を見て、あれがやりたい!と思った時だと思うのです。
わくわくがあるからこそ、初めに上手くできなくてもがんばれる・・・ような気がする。
そんなわけで音楽をするなら、子どもたちのやりたい気持ちを引き出してくれるような素敵な演奏をしてくれる演奏者で、かつ私たちの保育と同じように子どもの主体性を尊重してくれる方に、習いたかったのです。
習うというより、その人との時間の共有を楽しむということをしたいのです。。
 

 
 
そんな抽象的なお願いに応えてくれる先生いるのだろうかと思っていた時に
思い浮かんだのが照喜名俊典先生。うちの園は保育者も先生とは呼ばないので、子ども達もテルキーさんと呼んでいます。
何度か演奏に来ていただいていて、その時の子どもとのふれあい方や、子どもへの眼差しの持ち方にピンと来ていたので、お願いしてみました。
「子どもが音を出せるようになって、ラッパを楽しめる時間を作ってくれませんか?」抽象的であやふやななお願いだと今も思いますが、
それでも受けていただけました。感謝です。
 
1年目は、本当に手探りでした。子ども達みんな音が出るのかしら?から始まりましたが、やりたいと選択してくる子ども達は吸収が早いのか、 1回目でみんな音がでるようになりました。
大人だと、先生のきれいな音に音を重ねるのを躊躇してしまうけれど、子どもたちはおかまいなし。
音を出す気持ちよさも、美しい音と一緒に吹くという心地よさもすぐに自分のものにしていきます。実験がてらドレミの指を教えたら、子ども達も面白がって覚えてくれました。
それで、卒園式にはちょうちょを演奏。保護者の方にもわかりやすいように管楽器を吹けるすごさを文章にしてくれた先生にも感謝。
当日、現地にマウスピースを置いて、見に来たおうちの方たちにも音が出るかの体験もできるようにしてみたら
たくさんのおうちの方に「私、音でなかったよー。すごいねー」「楽しいね」とお声をかけていただきました。
そんな中吹く子ども達も、誇らしげで楽しい経験となりました。
 
2年目には、昨年卒園式を見た子どもたちが待ち構えていて、やりたいやりたいの合唱でスタート。ほとんどの子が経験し、みんな音が出せるようになりました。それで満足するのもよし、次を目指すのもよし。
一回満足して、上手になった周りの子を見て、やっぱりもう一回やりたいというのもありという方法で続けて、寺子屋まんぼうでは、フェスタにやりたいという子が増えてきました。子どもたちの話し合いで演目にすることになり、作曲家でもあるテルキーさんが曲を作ってくれました。
童謡とかではなくてかっこいい曲。好きに吹く子どもの音も、ドレミファソの音を出せるようになった子がそれを吹くことも素敵に聞こえる曲になるようにすごく考えて作られたことが練習していくうちにわかり感動。
子ども達に名前をつけさせてもらい「HAPPY!」という曲名に。本当に幸せな曲だなと思います。子ども達も「自分たちの曲!」と張り切って吹いていました。
発表会ではおうちの方にも大好評で、家でもラッパが吹けるようにネットで購入したという方がいたほど。発表会が終わるやいなや、ラッパをやりたい子がまたグッと増えました。
 
まもなく、 3年目。次はどんな風に楽しもうかなというところに今はいます。
音楽を聴いて楽しいと思い、自分の体を使って体験して、心を動かす。
自分ができることを知り、自分も、音楽も好きになる。
そんなことが今の時期には、正しい音が出るかどうかよりずっと大切だと思っています。
 

 
 
そして、それがちゃんと楽しいを伝える「かっこいい」手段として伝わっていることも大切。
これは、本当にプロの力なくしてはできないこと。
子どもたちを惹きつける音と共に、「やらせる」のではなく、楽しいままできるようになっていくことが、正しい音を嫌々出せるようになるよりずっと HAPPYで身になる経験だと思っています。